腹式呼吸を効果的に

 とくに意識はしていない方が多いとは思いますが、私たちは、日常生活のなかで「腹式呼吸」と「胸式呼吸」を使い分けています。

 それぞれどのような方法かというと、腹式呼吸は大きく横隔膜を動かして空気を取り込む呼吸法で、お腹に空気をためるイメージです。ゆっくり深く呼吸するため、一度に取り込める空気の量が多くなります。
腹式呼吸は自律神経の副交感神経を優位にすることでリラックスできます。就寝時は、無意識に腹式呼吸をしています。

 一方、胸式呼吸は、私たちが日中、主にしている呼吸法で、肩や胸を使って行うため、浅く速い呼吸になります。
胸式呼吸では自律神経の交感神経を優位にします。交感神経が優位になることで頭がすっきりとして、適度な緊張感を体に与えることができる反面、一度に取り込める空気の量は少なくなります。

 この二つの呼吸法をうまく使い分ければいいのですが、現代人は胸式呼吸をしがちであるといわれていて、とくに昨今の忙しい社会生活ではストレスによる緊張のあまり、さらに胸式呼吸が増える傾向があります。
 浅い呼吸が続くと、肺の一部にしか酸素を届けることができず、血液中に酸素を充分に取り込めません。
 また、呼吸法のバランスの崩れは、自律神経のバランスの崩れとなり、からだのさまざまなところに症状が出ることがあります。例えば、疲労感、立ちくらみ、動悸、頭痛、食欲不振、肩こり・腰痛、手足のしびれ、手足の冷え、イライラなどです。
 そのようなこともあり、最近では腹式呼吸の重要性がうたわれ、健康法として注目されています。
 また腹式呼吸の基本は鼻呼吸ですので、口腔衛生の面からも効果があります。

 腹式呼吸をもっと取り入れようという話をここまでしてきましたが、何ごとも限度があり、腹式呼吸にも注意点があります。
 まず、日中に何度も行わないこと…副交感神経が優位になり、心身が休息モードに入ってしまい、身体を動かすための筋肉に血液が行き届きにくくなってしまいます。
 続いて、やり過ぎないこと…二酸化炭素が必要以上に吐き出され、過呼吸で息苦しさやめまいなどの症状が出ることもあります。
 正しい腹式呼吸の方法を身につけたうえで、やりすぎには注意して、適度に取り入れることが良いようです。

 健康法として取り上げられることの多くなった腹式呼吸ですが、正しい方法で行うことで、はじめて効果的に健康生活に活かされます。