歯科心身症の診断・治療

 脳や心に原因がある歯科心身症が疑われるとき、それらに専門的に取り組んでいる病院にかかることもあるかと思います。では、そこでは実際にどの様に診断・治療は進められるのでしょうか。
歯科心身症の診断・治療2 まず始めは、患者さんのお悩みについてのお話を伺います。
悩みが始まったのはいつごろからか、どのような痛みや違和感を感じるのか、などを詳しく丁寧に聴きます。
これに加えて一般的な心理面の検査を実施するケースもあります。
 次に、お口のなかにその悩みの原因となっているような病気がないか診ていきます。
この診断では「除外診断」と呼ばれる「症状を起こす病気がない」ことを診断していく方法を用いることがあります。
その結果、身体面だけではなく心理面・社会面の影響も考えられるときは、歯科心身症が疑われます。

 歯科心身症の治療では、心理療法や薬物療法などの治療が行われます。
 心理療法では、カウンセリングを通して痛みの原因を患者さん自身が理解することを目指します。なにかが起きたとき、そのことをどう感じるか、どう考えるか、を「認知」といいますが、ストレスなどが原因で、認知に歪みが生じて症状としてあらわれるケースがあります。そのようなとき、考え方のバランスを取って歪んだ認知を客観的でよりよい方向へ向かえるよう手助けする「認知行動療法」を用いることがあります。
 薬物療法では、おもに向精神薬を用います。向精神薬のなかには、痛みを鎮める作用があるものもあり、薬物療法で症状を和らげたうえで、心理療法と組み合わせます。向精神薬は脳に直接働き掛けるものですし、副作用のこともあり、使用を恐れる方もいらっしゃいます。患者さんにメリットを理解していただき、不安を取り除くことができれば、著明な効果を上げることができます。

 歯科心身症は同じ病状でも、治療法が必ずしも同じではなく、患者さんによっては治療効果に差があることもあります。症状改善に向け、焦らずゆっくり取り組んでいくことが大切です。