歯の寿命


 以前は、「人生六十年」などといわれていた日本人の寿命も、「人生八十年」といわれるようになってから、ずいぶん久しい感じがします。 人間に寿命があるように、歯にも寿命はあるのでしょうか。
歯そのものは、年齢によって大きく変化するということはありません。 加齢によって黄ばんだり黒ずんだり、長年の使用で磨耗したりはしますが、歯本来の機能が著しく損なわれて「死んでしまう=寿命が尽きる」ということにはなりません。その面から考えると歯には寿命がないとも言えるのです。
歯の寿命  しかし、実際には虫歯や歯周病などによって、抜いたり抜けてしまったりしてなくなって(亡くなって)しまうので、その意味では歯を失った時点を「寿命」と考えるのが適当かもしれません。
厚生労働省の調査では、歯の平均寿命は歯種(中切歯、犬歯、大臼歯など)によってかなりの差があり、50歳~66歳くらいだそうです。
 寿命が長い歯は、糸切り歯などといわれる犬歯で、この歯が比較的長持ちなのは、噛むときにあまり力がかからないことと、歯の根が長いことが理由だと推測されます。
逆に短いのは第二大臼歯といわれる一番奥の歯で、噛むときの負担が大きいことと、歯ブラシが届きにくく、清潔な状態を保てず病気になりやすいためと思われます。
全体の平均は60歳程度で、日本人の平均寿命と比べると大きな開きがあります。ずいぶん長い期間、歯が不完全な状態で過ごしていることを、あらためて感じます。

人の寿命は長くなったとはいえ、今後、短い期間で大幅に延びて、たとえば150歳になる、ということはないでしょう。それに対し 歯の寿命は、個人の努力で比較的容易に延ばすことができます。歯は体の器官の中でも非常に丈夫に作られていて、前述したように歯そのものは、年齢によって大きく変化することはないからです。ですから歯の寿命を延ばすには、歯を「寿命」にしてしまう=歯を失ってしまう原因となる、むし歯や歯周病になるのを予防すればいいのです。

1本でも多くの歯を残すことは、食生活や口元の見栄えに影響するだけでなく、全身のいろいろな機能に作用します。残存歯の数と全身の健康や疾病との関連の研究も多くされています。「年をとると歯は抜けるもの・・・ではない」とご理解いただいて、日ごろのケアを行い、長寿と健康を手に入れていただけたら、と考えます。