以前のコラムにも書きましたが、奥歯は我々が生活していくうえでいくつもの大切な役割を果たしています。
食物を噛み砕いたり、すり潰したりすることに始まり、コミュニケーションに欠かせない発声発音を助けていると同時に、正しくきれいな歯並びの基準でもあり、さらには運動時に瞬発力を発揮するために奥歯を食いしばり、高齢者の方も奥歯がしっかり噛めると転倒しにくいとされている…などなど。
そんな働き者の奥歯ですが、40~50代になると虫歯などダメージが目立つようになってきます。
これは長年の酷使で勤続疲労が起きていることも一因と言われ、そしゃくを繰り返してきた負担で、歯根にひびが入ったり折れたりするなどダメージを受けやすくなっていると考えられます。
そしゃくの積み重ねに加齢も加わって、歯茎が下がり根元周辺がむき出しになり、これも虫歯になりやすくなる要因となります。
加えて、以前、治療した歯の治療痕も影響します。時間の経過とともに、治療した詰め物や被せ物と歯との境目から入り込んで虫歯になってしまうこと(2次う蝕)があります。
奥歯の勤続疲労などのケアを怠り虫歯になり、最悪の場合、歯を失うこととなると、健康面に様々な影響が出てきます。
抜けた部分をそのままにしておくと、まず、残った横の歯が傾いたり、上の歯が下に伸びたり、かみ合わせのバランスが崩れてきます。その結果、そしゃく時にアゴの周りの筋肉(側頭筋・咬筋・僧帽筋)のバランスが崩れて、それぞれの筋肉は過度の働きを強いられるようになります。
上顎から頭部につながる側頭筋に負担がかかり過ぎれば頭痛が起こり、下顎から肩周りにある咬筋や僧帽筋がこわばると、肩こりが起こるという具合です。
他にも、唾液の量が減少したり、顎関節症を起こしてしまうリスクもあります。
勤続疲労してきた奥歯の健康を守る方法としてできることは、毎度のことですが、歯磨きを中心とした口腔ケアです。
奥歯は歯ブラシが届きにくく磨きにくいので、とくに意識して丁寧に磨きましょう。歯と歯の隙間や、詰め物や被せ物と歯との境目なども磨きましょう。
歯を失ってしまった場合、放っておかずに治療します。ブリッジ、入れ歯、インプラントなど、選択肢もさまざま選べるようになってきています。
なかには自由診療のものもあるので、歯科医師ともよく相談して、納得のいく治療を受けましょう。